昔、狛村の廻照寺では、能が演じられ、狛の祭りはとてもにぎわうものでした。狛の旧家に大きなけやきの木がありました。ある朝、その家のあるじが庭を散歩していると、そのけやきの木に何かがぶら下がっているのを見つけました。急いで庭番を呼んで確認すると、どうも能面らしいものでした。「なんと不思議なことだろう。これはきっと天からの授かりものに違いない」といいました。能をたしなむあるじはとても喜び、大切にしていました。
ところがある日、能の面がとられてしまいました。まわりまわって、その面は京の富豪の蔵に納められていました。その蔵からは、ふしぎと泣き声が聞こえるようになりました。なんと、能面が泣きながらうたっていたのです。
いのいの こまいの こまのまつりに とんでいの
それからしばらくして、能面は狛にもどされたそうです。